https://pms0lsxm.hatenadiary.jp/archive/2019/09/15
どんどんどん、どんどんと、船は人の里をはなれていった。
―
…
―
もう、夜も昼も夜も昼も夜も、すっかりごちゃまぜになっていた。
どろりと苛烈に太陽は輝き、空も地も、炎と煙は、烏賊墨色に染上げて、我々は、
己達は、ただたどりついて、なにがはじまって、そしておわったのか―どこに向かって―そして
―やがて―
轟音されどなを、異界の生物の喧騒。正気が滅するほどの醸醇の薫り、それに捕ぇられ、時に誘ゎれ、一人、またひとりと仲間達はかれとおなじもとへそれを埋尽くす虚無の漆色へと飲まれ
ここに、人間の象としてあるのは、やがて己だけになった。
もぅ、なにがはじまって―そしておわったのか―どこに向かっているのか―
わからなぃ。
ただあれだけ世界を埋め尽くしていた炎も煙もたちながれて
あれだけの人間が荒地のなかにさっぱりと気配を失ぅと共に、
その還元風化本能を荒げる、大自然は質量を益し、力なきわずかな己は蛍のよぅにうつろっていた。
どこまでも乾ぃた、それでいてふかく湿った重みに沈みそぅな己は、武器もものも糧すらも尽き、身ぐるみも擦り切れ、血柱に濁った双眸が映す風景をさまよっていた。
すでに全身の苦痛や危機的空腹の感覚すらも惜しく、神経は焼けてぃた。
身に抱くすべてが千切れていく中それでも幾度破裂しそぅになった心臓は、名残たらしく鼓動を打っていた。
果てない静寂から大気を取り戻し始めた環境の音は美しぃ天界の旋律に思ぇる。
『イーハトーヴォ』
心のはねたゆらめきに己の、つぃにあしは斃れた。
『黒ぃ天鵞絨のなかの、つぃに己も、かれのもとへゆくのか…』
にしびれるよぅに感覚する顔面の気配を、腸を穿がるよぅな酷く懐かしぃ
薫りが―はりたおした。
まっくらな意識がただこの地獄に捉ぇたさきは
生
のじがある。
浮世は焼け焦げた。
人やめこの手もはや
かえるところをしらず。
既にもはやこの身体は人間に非ず。
ぁ―あ―そぅだ、この字の意味は、そぅだ―
煤錆色に爛れた紺青の本が浜風にふるぇていた
そぅだ***だといぅんだ
手の中の、その甘ぃ草の繊維でできた塊を喰い契ぎった。
郷里の懐かしぃ薫りが鼻腔から肺、食道に通よった
―永遠の人間の心と精神性の結果が胃に流れ込んだ
すきとおった風、―青いそら―うつくしい森
黄金色の命が吹くあの場所へ
草の波―つわものどもの山々をこぇて
あの、
「己れがんまぇだ、じぇってぁぜぁごさけぇだ。」
己は人間あやめてでも、生き抜いてやる。
人間の生命を捜がす汽笛が聴こぇる。