https://pms0lsxm.hatenadiary.jp/entry/2019/10/14/042445
**〔exspiravit ∃ureka papilionem〕
「こいつぁな、君(おまぇ)らさん達にとっちゃ、幽霊なんだよ。」
何のさとりもむげなことも無ぃよぅに、
橅は告げた。
「幽霊と同んなじなんだ。」
確しかなその人間としての実体をかぃ寄せて
儚げに白小皿に乗るその白蜜色の滋味(ケーキ)へ雛の鳥足のよぅな薄錫色のフォークを手へ握り刺し、喰らぃぶぅたれたまま、なすげもなくされるままにしてぃる。その葱の無気力に佇(たる)んた姿を観たところで。
一重に道逸(みち‐そら)せながらも、一応は一介の無垢なこどもで有るぼくには、その状況をどぅと告げられたところで、その言葉が綴(つ)げる意味を倪(げ)する理解が及ばなぃ。
そんな陳腐間分(ちんぷんかんぷん)な感想を発言よりも饒舌に、固まった眼が語るのを見てとるよぅに、
監獄主―は―さも くっふ、と尚(さら)にまるでサービスの如く気障(けれん)に理解及ばせなぃ微笑を一とつ溢(こぼ)してから、
「こぃつはな、この世に生まれて、そして
もぅ生きてなぃ"ことになってる"んだ。
君らの生きるこの『世界』の中ではね。」
くぴっ、空(うつろ)な瞳瞬かせ 隣で蓮根が首を傾しげる
「どぅしてだぃ?」
そぅだ、どぅしてです?
「…どぅして、?」
ぼく、ぼくらは子ども依(なが)らの純粋さで、素直に
疑問を通ぉり超してただ一つの答ぇを示す
目の前にふさわしぃ在の様(こ‐まま)の言葉をいぅだけだった。
「だって…ここに居るじゃなぃか。」
「だろ?でも大人ってのは、それをやっちまぅんだよ!」
橅はまるでそんな蓮根のいつものわるふざけた笑顔に似てるよぅにくふくふくふと。倛(そ)のわが手に
なされさせておくがまま億万年の懐(な)れた暇をつぶすよぅにいづこを眺める葱を、任せるがままもたれさせつつまるで高級な美術工芸品の人形のよぅに抱き締め上げたまま
とろとろと詭弁を重さねる橅へと無意識に自らが受ける威圧感に理由も無くしあっけにとられてぃると
もぅすっかり手許の皿の中を空にし、気楽に隣で坐したままひょろりとまぇに脚を崩した蓮根が
「つまり、あの時うちのママの飛び込み心中の
どさくさまぎれで電車に轢かれて死んじゃった筈の葱くんは、
本当は生きてたんだろ? 簡単なことじゃなぃ。
なにをそんなにひっかかっているんだぃ?」
と、ナンのあっけらかんにもともこもなぃそんな蓮根の突っ込みにはっと目が覚めた訳ではなぃ、―わけかどぅか―は知らないが…われながら聡(さと)けくまた、ぼくは勘づいてぃた。
総(ま)るで深海の蜻蛉みたぃに紫外線のたりなぃ髪と白い肌、
磨かれた手元の陶磁のよぅに、くらつくよぅにきれぃすぎる足の裏。
剰まりにもこの永時の隙(しじま)に綴じられた封刻の魂の器達と同響(どうちょぅ)した、それでぃてつと現世の常人には出せぬ伝奇の昏影(たそがれ)に滲むような人格(ひととなり)。
「葱は、在(あ)の時からここにずっと―?」
心臓がどくんと跳ね上がり、咽に息が詰まる言論《ゲンジツ》以上の質量を持つ。
*螢のよぅな燐光、翡翠のなかの微睡み
屋敷の腹の中でいっぱぃに頭のなかにつめこまれた
今迄の様々な懐疑が凝結し、弾かれる様ぅに意味なく虚(コ)に生まれる質素すぎる言葉。
「何、んで"です"か…?」
この樹脂の皮膚に硝子の眼、無多の生温かき言虚(こえな)き観衆に周まれた断罪場で。
「愛だよ。」
巨男は一杯の紅茶に砂糖でもほぉるよぅにしれっと語った。
「それで"大人"は、こんな世からいつまでもぬけだせなぃのさ。
なぜだろぅな、
不思議だよな。思ぅだろ?」