*ぷみささんちの白紙帖

ぼくのこころのふりーだむ。

*ぴちゅ:めゝんと∴ぱらたいぽ

 https://pms0lsxm.hatenadiary.jp/entry/2019/10/03/223343

*〔exspiravit ∃ureka papilionem


「惚(ほ)れるんじゃなぃぞ。」
琥珀色(こはくいろ)の円(まる)いケーキとその華奢(きゃしゃ)で瀟洒(しょうしゃ)な白ぃ食器(うつわ)を両手に、大男(おぉおとこ)は
粛々(しゅく-)と、みなで円陣(エンジン)を組(く)むよぅに床ごしに並び
相(あい)対(た)ぃして居据わ(いす-)る葱の隣(となり)の、空ぃた空間(くぅかん)に坐(すわ)った。
結局気休め(やす-)と油断のならなぃ状況の鎖続き(くさりつづ-)の出口(でぐち)なき転属(てんぞく)である。

 

雑然紛然(ざつぜん-ふんぜん)な収蔵物(しゅうぞうぶつ)の脇(わき)を 袖(そで)をわずかな迷ぃなく縫(ぬ)ぅ所業(しぐさ)は、剰(あ)まりに慣(な)れにつけても既(すでに)軽業師(かるわざし)に近(ちか)ぃのじゃなぃか。
「すまんね、この狭(せま)さだもんでな、
中味(なかみ)も博士の大変に貴重(きちょう)な標本(ひょうほん)ばかりだしとても憮然(ぶぜん)にゃ扱ぇない。
一つ、一つ大事(だいじ)にやらなきゃならなぃんだ。」

 

「てめぇは、自分の扱ぃが一番憮然(いちばんぶぜん)だ」
大人しく紅茶カップの前にぺたんと坐(すわ)りなおしてぶぅ―たれる葱(ねぶか)の脇(わき)に、ぬぉと膝付き(ひざつ-)ぉお、よし、よしとその旋毛(つむじ)を片手で配しらぃながら(あ-)場(ば)をこなす橅のこなれた仕種(しぐさ)に、
うまれる謎のむずはがゆさに任(まか)して
捥(あ)てつけのつもりで口を出した。
「橅(ぶな)」

 

「なんだぃ客人、おれに話し係(か)けるよりネギを構(かま)ったほぅがいいぞ、
言っただろ。やがて喋っ(しゃべ)らなくなるって」

 

「あなた、頭が善(よ)ぃでしょう」
橅は自分の髪に態(わ)ざと宛(あ)てがった手からつん、と指(ゆび)をはじく。
「おれは自分じゃわからなぃな、なんせ周ゎりが叡知の塊(えいち-かたまり)づくしばっかりだから。」

 

「わざとぼくに、『葱を頼む(ネギ-たの-)』と、いぃましたね。」

 

「その問ぃがおれの望む意志(いし)に対(た)ぃし、おれが正直(しょうじき)に本心(ほんしん)を告(つ)げたといぅ意味ならば、そぅいうことになるかな。」
まだぼくにはわからなぃが、大人になるにはこぅいうのばっかりって、慣(な)れなきゃならなぃもんなんだろぅ。

 

もて遊(あそ)ばれつづける報酬(むくい)に、
攻撃のつもりに投(な)げた皮肉(ひにく)の言葉が、何故(なぜ)か統(す)べて相手への肯定(こうてい)になって返ってきた心地(ここち)だ。

 

子どもじみた甘(あま)ゃかしい薫り(かお-)だけがとぅとぅと素直(しらふ)に漂(ただょ)ぅ。

 

拳(て)を振(ふ)るった現実(げんじつ)が幽霊の曰(ごと)く擦(す)り抜ける。
ぼくらはほんとに無事に帰ぇれるのか、
そもそもここがもぅ現実なのかももう凄(す)ぐ怪しぃ。

 

あぁ、ここはつぃに幽霊屋敷(ゆうれいやしき)の胎(はら)のなかなんだ、そぅなのか。

 

いたずらの冒険(ぼうけん)ごっこにどきどきした頃が懐(なつ)かしぃ、
普通のぼくばっかりじゃ、どぅしてこんな先の見えなぃつまらなぃ選択(せんたく)にしか―この世界(せかい)につづく道を―できなぃんだろぅ。
どこにいるんだろぅ、本当に蓮根(すぎもと)は。

 


留(と)ぢこめられた漿晶(けっしょう)の、骸(むくろ)の瞳(ひとみ)だけが愛着(あい)ありげに微笑んでぃる。

 

生命の在処(ありか)の処遇(しょぐう)すらこの世界じゃ陒ぅ(あや-)いのに。

 

生とそぅで無ぃものを境を融熔に絡め抱く
空気と塵(ちり)の白色に無色に色褪て垓(ど)こまでも透明な、そのすべてに
まともに触れるなといぅのならば、電磁線(エナメル-)の迷路(まよいぢ)のごとく入り組(く)んず解(ほ)ぐれつと、時に互ぃをしめやかに支(ささ)ぇ合(あ)ぃ、時に相手をするどく押し退(の)けへし合(あ)ぃを
このただ一室(ひとつ)の閉塞系(せかい)をも掌握(しょうあく)する万有引力(ばんゆういんりょく)の支配下(もと)で拮抗(あら-がゎ)させながら、
有形の生魂(せいめぃ)の主(あるじ)たちが天球図(プラネタリウム)を想(おも)ゎせる幾何的(マスマチィカル)に繁雑(やゃこし)さを勿(も)ち処矮(ところせま)しと押し込められてぃる、そんな小宇宙(プラ・ネット)のなか、
ただ真正面に見える扉が、それを唯一(ゆいぃつ)の出入り口として
この密室の通路と―呼べるもの無き道順(みちのり)はここまでつづぃている。
そこに窓から侵入してきた僕等が居るといぅわけなここは、その部屋の一空間(ひとくうかん)を
まるで繭(まゆ)のなかのよぅに持った最奥だ。

 

鳥が降りたつがごとく微風と(そよかぜ-)平行に―
その茶席とテーブル代ゎりの、油精(ワニス)の様ぅに照擦れ(てりす-)て
白繆け(すす-)た様がまるでレース織(お)りのごとく趣く(おもむ-)古びれた床板に措(お)かれたのは、

 

飴(カラメル)色に煮詰(につ)められた白ぃ果実(かじつ)を並べた黄卵金(たまごいろ)の艶(つや)が光(ひか)る生地(きじ)を包(つゝ)む
薄焦(うすこ)がされた綿肌(スポンジ)も柔ゎく華(やは-な)やかな、ご立派(りっぱ)なシブースト・ケーキだ。

 


この茶餐(ちゃせき)のメィンディッシュが、どぅやらは僕達ではなぃといぅよぅでよかった。

 

「ケ―キだ!」
飄々(ひょう-)とした声が領(うなじ)の後ろから響(ひ)びく。
「蓮根(すぎもと)ッ!」
「ふぴゃっぽへははは!」
この部屋のぽぅやりとした光の夢幻色(とうめい)を混ぜ込んだ虚窕(うつろ)な琥珀の大気の魅力(みりょく)を華奢閉(きゃしゃと)じ込めた
うやうゃしくやゎらかな蜜(みつ)味(あじ)の結晶と、惛の後(こ-ご)に及んで外連(けれん)な程とろけそぅな黄金色の煌(きらめ)きに純粋(じゅんすい)な欲望(ノリ)で沸ぃ出て誘ゎれて出て(わ-で-さ-で)きたのは、

そぅ、
まぬけな笑ぃを尋(た)ずさぇつつ背中からひょっこりと出(で)てきたのはわが兄弟、蓮根(すぎもと)。

 

女の子がお砂糖とスパイスと素敵(すてき)なもの色々(いろいろ)、で出来てぃるといぅ
のなら、こぃつは将来ただのとんでもなぃスケベになるに違(ち)がぃなぃ。

 

あまりにも場放(ばばな)れした緊張感(きんちょうかん)なくひびく何時(いつ)もの声音(こわね)に安堵感(あんどかん)すら想(おも)ぅのがくやしぃ、くやしぃが正直―
この何処も(どこ-)畏(かしこ)も触(ふ)れがたき孤高(ここう)の金糸水晶色(ルチル)の檻(おり)にとぢこめられて…その透明(とうめい)な針(ハリ)になすべなくのみこまれかけそぅだったぼくにとって-いまのこのパラレルパラドックスないまにもパーに混乱(パッパラパー)になりそぅなパーティのパラダイムシフトからのパーソナリズムのパッシヴルな一部解放(いちぶかいほう)になきそぅだ。
「どこぃってたんだよ!部屋を見回(みまゎ)しても いなぃし、いなぃしとおもったら…」
「きみがあんまりにつまらなぃ気分(きぶん)だったから、あんまりにおもしろぃこのボクにきづかなくなっちゃってただけさ」
わるびれもおくびもせずにきらきらとした眼(まなこ)でケーキから立ち昇(のぼ)るほのかにシナモン薫(かぉ)る大気(たいき)を眺(なが)める
となりの背中のあほにもらぅ勇気(ゆうき)がありがたすぎてくだらなぃ。
「ひどぃじゃなぃかずっと自分だけ、隙(すき)あらば逃(に)げよぅとしてたんだろ!」
「そんな不名誉(ふめいよ)だなぁ、ただボクはいまのこの場がもっとおもしろくなるよぅな、いたずらをしてやろぅと見はからってっただけさ」
「ずっと、ずっと―そんなとこにさ―隠(かく)れてて!なんなんだよ
 もぅ、早(はや)く…助(たす)けてくれよ!」
灯台(とうだい)デモクラシーといぅやつですな!」
「ばかなことゆってなぃでおまぇのばかさでこのばかな情況(じょうきょう)をなんとかしてくれよぅ!」
「ほんとに大根ははなっからから、ひとりじゃ泣(な)きむしふぬけ虫(むし)だなぁ。」
そのばかに言ゎれて気付(きづ)ぃた、共にある兄弟(きょぅだぃ)の顔(かお)にもぅ気を抜ぃたんだとおもぅ瞬間(せつな)の共(とも)ににとぅとぅと溢(あふ)れる涙と共(とも)に、もぅすっかり、なんといぅか一とつの、窮鼠(きゅうそ)として追(お)ぃ詰(つ)められた野生生物(やせいせいぶつ)も笑ぇ(わら-)ないほど心(こころ)がまるぎこぇである。

 

「貴様(きさま)のせぃでばかだといゎれた」
葱はあぇて無関係(むかんけい)に粛々(しゅく-)と仕業(しぐさ)をつづける、橅の手元に目許(めもと)を向けている。
「ほんとぅのばかをわかってなぃばかにしか
ひとをばかとは言ぇないんだよネギ。
ふぅ。
きみは随ぃ(ず-)分一人で忙(いそ)がしぃんだな」
音(おと)もなくケ-キを切り分けながら、橅は木漏(こも)れ日のよぅに優く(やゎ-)不穏(ふおん)にうすらほくそぇむ顔色(かおいろ)を一つも変ぇず
その翳(かげ)でうるさげく機嫌斜(きげんなな)めにそのばをみはからぅ葱の目線(めせん)をどぅ、とあやしてこころおゎせるように、
ことり、んと一つケーキの載(の)った小皿(こざら)を膝前(ひざ-まえ)に置ぃた。そのままケーキ・ナイフをわけなさげく一周回(ひとまわし)して虚空(そら)に問ぅ。

 

「ケーキは、おまぇさんとお客と、合ゎせていくつだ?」
「三(みっ)つだ」
葱がつんと答(こた)ぇると、「そぅか」柔腰(やわごし)の巨漢(きょかん)はかわらぬ薄笑(うすわらぃ)を湛(たた)ぇて、
素直に繊細(せんさい)にナイフをホールケーキに侍べ(は-)らせる。

 

橅はなにがおかしそぅに、僕等(ぼくら)へ
長い巻髪(まきがみ)の蔭(かげ)に目配(めくば)せをくゆらせる。
「そぅいう訳(わ)けか、為程君達(なるほど-きみたち)は、たしかにネギの『お友達(ともだち)』のよぅだ。」

 

くっふっく。

 

 「こら」 
ふって沸(わ)ぃた、ひとつの切れあじもなぃ叱責(しっせき)の言葉(ことば)に意識(いしき)を向(む)くと、
もぅその屋敷守が意識(いしき)を向ける相手はぼく達(たち)ではなくその目先は

 

葱(ねぶか)が音も無(な)ぃほどの握力(ちからほど)でケーキの装飾皿(デザート・プレート)を引き寄(よ)せて、
シブースト・ケーキにケーキ・フォークを握(にぎ)って刃先(はさき)を入(い)れよぅとしてぃるところだった。
ちなみにどぅでもいぃが、グー持(も)ちで。
この世界にただ一人の自分にとって至極真当然(しごく-まっ-とうぜん)の動作(どうさ)を
不条理(ふじょうり)に、止められた葱は黙(だま)って抗議(こうぎ)の眼(まなざし)を向ける。

 

「まぁネギちょっときけよ、皿が皆(みな)に揃(そろ)ぅまで待(ま)とうじゃなぃか、ネギ?
『みんなそろっていただきます』だ。」
「そんなの知らなぃ。」
「外じゃこぅやるんだ。どうさひとつやってみよぅじゃなぃか。せっかくこんなに、みんな揃ったんだ。」
「その行為の必要論理定義(ひつようろんりていぎ)に於ける意思決定要項(いしけっていようこう)が生理的現象(せいりてきげんしょう)といぅ唯一的(ゆぃいつてき)な個々(こ-)の状態上(じょうたいじょう)に属(ぞく)してでなく異種体間(いしゅたいかん)で画一化(かくいつか)して共合(きょうごう)し同律順(どうりつじゅん)に介(かぃ)して行(おこな)ぅなんて、愚の骨頂(ぐ-こっちょう)」
「そんな愚行(ぐこう)を友に重(とも-かさ)ねる共謀者(きょうぼうしゃ)となることで、愚(おろ)かな人々はりこうぶるんだよ、ネギ」

 

不機嫌(ふきげん)な瞳はとばっちりで、素直におりこぅに正座(せいざ)してぃたぼくらのほぅに向けられた。鋭利(えぃり)な眼光は母方(はは)由来の幽華(ゆうが)さこそあれやはり迫力はなぃ。
こんなに人生で宴(うたげ)の主に歓迎(かんげぃ)されず、そぅそぅにうれしくなぃ あまりにとても美味(うま)ぃそうなケーキが、脚許(あしもと)にことりと、美しくなすすべもなく無防備(むぼうび)に措(ぉ)かれるさまを、
小ぃさなフォ-クを拳(て)に握(にぎ)ったまま、葱(ねぶか)はうらめしそぅに眺める。
「はぃ、どぅぞ、親愛(しんあい)なる共犯者(きょうはんしゃ)の友人君(ぎみ)よ。」橅(ぶな)はそんな最中(さなか)にすら、主(あるじ)の無口(むくち)と不愛想(ぶあいそう)を埋(う)めるためか優雅(ゆうが)に人並(ひとな)みの小世間話(こ-せけんばなし)をはさむ。
穏(おだ)やかに懇々(こんこん)とこの場のすべてを、はじめからひとつも自分の調子を崩(くず)さなぃままに勤めて
ゆったりと廻(まわ)す彼奴(きゃつ)はもしかして、この世界のすべてでもてのうちでまゎしているのだろぅか、なぃしからかってるのだろぅか。そぅ映(うつ)るのは己(おのれ)の器の狭(せま)さか、この目の前の葱―といぅ青年への同情心(どうじょうしん)だろぅか。

 

せかいのうんめいのお り
***********に、必死の悪態(いたづら)の抵抗無(む)なしく飼ゎれていることが。
ぼくは彼がなんとなく、なにものなのかわかり始めてぃた。