*ぷみささんちの白紙帖

ぼくのこころのふりーだむ。

*ぴちゅ:めゝんと∴ぱらたいぽ

https://pms0lsxm.hatenadiary.jp/entry/2019/10/04/235248

*〔exspiravit ∃ureka papilionem

 

暉(ひか)る眼に睫(まつげ)を垂(た)れてなを幽玄な幻日(げんじつ)の埵(た)れる頬に傾陽が沃(そそ)ぐ白ぃ相貌に眼をやる。
「それじゃ、みんなそろって
『いただきます』」
   

斜(はす)向ぃの儚照(こうけい)に眩入(ながめ-ぃ)り
その薄血色(うすべにいろ)の唇が微蠢(かすかうご)くのに―
はっ、と気が付けば、もぅ
一仕事凡(すべ)て済ませた大男の司会係が、自らこの食卓の輪(パーティー)のなかへ並び
主のそのいつもの衡(す)ぐ隣を己の定場所(ていいち)として、しゃっかりちゃんと着席しているところだった。

それはやはり古膠(こな)れた標本達の囲む収蔵庫の中の、朽土色(オークレット)に皺枯(しゃが)れた床にぺたりと坐わる人の面々-(と深海魚の樹脂付標本)-
のおぼろげな菌輪環(フェアリー・サークル)のよぅなものなのでぁるが。

くっふっと薀(くぐも)った、微笑(ほほぇみ)を摸(うか)べながら
ふらちにもお破戒(おきてや)ぶりなわが兄弟の悪徒(いたずら)に息合(いき-あ)ゎせるよぅに、なしくずしてきに始まった脆(もろ)ぃ約束の号令(しらせ)で、

そのいかにも魔術式―それは思春期の少年達のちょっぴり背瀆的(スリル)ないたずらの―でも始まるよぅなふにあぃに張り詰めつつも浮き足のだつ無造作にちぐはぐな陳(なら)びで、
淑(しめ)やかな茶会はスタートした。

カンカンカン


閑静な閉塞された世界に淡く立体に交(かさ)なるカン、カン・と、細身のステン・レス・フォークが繊細な磁器を叩く鋭ぃ音。


現実が感覚の覚醒に・シトルリンの蛍光色に熔融(ようゆう)するなか、

手元で崩れる趣贅品(ケーキ)の如くに閃(またた)き捷(か)ける脆(はかな)ぃ記憶に。

もしくは、緻(かほそ)ぃ金属の鋒(きっ)先(さき)が涙(なみだ)のよぅに照り返す白光に。

カン、
カン―

乾ぃた脳細胞に甘美の滋味が冴(さ)ぇ巡らせたか。

ぼくはきみが、だれなのか知っている。
「葱」
滲(にじ)む景眼(けしき)に再生する映情(きおく)の代謝
…―
その遊離的(ラジカル)な引力が相克(そうこく)するよぅに、
カン*
糟(かす)かに重ねた常軌(つながり)のなか泡氣(あぶく)のよぅに蘇(よみ)がぇったのは、
「ネギ… 知ってる。」
 
「ネギ…葱、そぅだよ、そんな形の字を書くんだ。覚(おも)ぃだした。」
「きみは、雪さんの、あのときのお子さんだよねぇ!」
ぼくの言葉につづいて蓮根がすっとんきょぅに告げた。

父親の顔より繰り返し見た博士の書本。
その文躰(-たい)、頑固な程重厚に堅丈(けんじょう)な気質、その内の僅(わず)かな古びた微風(そよかぜ)に濯(そそ)ぐ扉の隙間から射縣(いか)ける光の切梁(すじ)のよぅに人間性を垣間(かいま)見させる口語(こうご)、

「白河 葱(*)″くん″、は、葎博士の息子さんだ。
あの時、雪さんにつれられてともになくなった筈の。」

黙々と―その彼は静謐な儀式を矧(はこ)ぶ神使のよぅに手際(てぎわ)を進めてぃる。
「ぁの…葱」
くちりと茶染のレースのよぅに黄卵色に乱れる断層が白き花輪の皿の上でその刺槍(フォーク)に絡め執(と)られる。
「葱、ね」
混ぜられた口元へ運送(はこ)ぶ。そしてそれは止め処(ど)なく丹精掛(たんせいか)けた軽やかな洋菓子の趣向(おもむき)が産(う)み出す食感の重奏音(かさね)と捏(こ)ねられて咀嚼(そしゃく)される。
ごくり、
花弁のよぅにたおやかに陽差しにこぼれゆらめぃだ、白ぃ掌は次の官能へと、瀟(しと)り、弾ける音をたてながらまた一片、一ひらと錫漿色(イリディウム)のフォークを延ばされ、その一口掬(すく)われるたび薫りを醸(かも)して浮か-。、いゃ
「あの…。?」
「言っただろ、ネギは食事中は絶対に喋らなぃんだ。
育ちが善(よ)くてな。生命をいただくことに対ぃする
お行儀は守もるよぅにしてるんだ、ほら」
「ぁ―、あ…そぅなんだ。」
やっぱりこぅいう性格なんだなこぃつ。

と、すると…この食卓におぃてまた、このくぇない男と話しつづけるしかなぃわけか。はぁ。
ぼくらは、所在もとめげにふわふゎと皿の上でお利口ぅに座るそのケーキへとフォークを添ぇた手をのばしそっと、一とくち口へとほぉりほぉばる。

まるで雨天の上がり白々く明けがさす黄昏の―雲間のよぅなメレンゲはその涼凛(すずやか)な粋白(じゅんぱく)に叛(はん)しぴちぴちと熱くとろけ暖(ぬく)まゆぃ。
包むその薄紗(さらさ)が解壊(ときほぐ)れふくよかに綿胞子(わたぼぅし)を纏(まと)った潤滲(うる)ゎしげな亜麻色(あまぃろ)の果実が歯の上でかしゅりとちぎれれば、幾多(あま/いくた)の陶酔(とぅすぃ)的(てき)な薫りに酸味の星塵(ほしくず)を捲(ま)きちらばせながら痺(しび)れるよぅに舌で溶融(とろ)けださせる、
溢れ出る濃密な糖蜜(とうみつ)の呼気は正真正銘、ほっかほかの焼きたてだ。
「まさか…これ、自分で焼(や)ぃたんですか?」
「今になって気付いたのか君。意外ぃと、間が抜けてるんだな?」
「はぁ…おいしぃ。」
柔肌(やわはだ)に黄金の輝きをのせ繊細(せんさぃ)な滋味(じみ)が達薫(たちかお)るシブースト・ケーキは店舗(プロ)の代物でなぃ家庭(かてい)が素人の捥(うで)で仕上(こしら)ぇたものには見ぇないし遜色(そんしょく)もなぃ。
「すごぃですね。」
「惚れるなよ」
素直にこの男はこぅ、どうして人に褒めさせてくれなぃのか。
「惚れません。まずぃことないのはこのケーキです。自惚れじゃなぃですか」
「そりゃよかった。ネギのほかかまぅわけにゃいかなぃもんだからな?どぅぞ御満足戴(ごまんぞく- い)ただき光栄だよ、かわいぃネギの客人。」
その答ぇは態(わ)ざとらしぃ。これでまだ人のことは片手間であしらゎれてるっていぅんだろぅか。 …元々人好きなんだろぅか。

「…葱のことなんですが」
「可愛ぃよな、ネギさこんな小さぃ口を兎や廿日鼠(ハツカネズミ)みたぃにじっともごもご動かして、ほら口の端にカラメルが付ぃてるぞ」
橅はどこの懐からまたとりだしたのかレースのハンケチーフで、そのいかがわしく整ぃすぎた顔を虚無(むな)しげく白布(しらぬの)翻(はばたか)せ烈(はげ)しく肘で突く間を縫いながらにほにほと油断も隙(すき)もなく口角を緩(ゆる)める
「葱のことを、教えてくださぃ」
「ぉ嬉しぃね、やっと共犯者になる覚悟ができたか?」
「ならなかったらどぅする気です」
「どぅなりたくなぃ?」
ブナは焦蜜(カラメル)が挽附(ひりつ)ぃた純白のハンケチーフを太ぃ指先でくしゅりと内側へまるめる。
「ここで、全(すべ)ての真実を知らなぃことです。」

兄弟が蜜月の甘味(ケーキ)をほほばって、こちらをしずかにみつめてぃる。
果実を甘く砕きながら、風景が窓外の木漏れ日に明滅する。