*ぷみささんちの白紙帖

ぼくのこころのふりーだむ。

*ぴちゅ:めゝんと∴ぱらたいぽ

ふりかぇれば、まるでさきほどまでのぼくへのよぅにいちもくさんに果てへとはねまゎる全身でがむしゃらに駆けるがごめちゃん、それを小走りへ追ぃかける萩野のおばさんたちのかげは

(まるでぁの―)

まっすぐにながく伸び陽にあらがぃつづくへて長身の影法師等達と共に、道の向こぅ角へと過ぎさっていった。

ご主人の卓越された専業主婦である日々の生活を季節の力の如く猛然かわらぬ日常へ廻らす脳内の周到な時間割の―この先の予定の思考から放なたれたるごはんの気配を、あのあざとくもこさかしぃ中型犬のふゎりかろやかな野性はきっと察知〔みる〕に感んじとったのだろぅ。

 

その日常の安穏を象徴する薫ぉりは、やがてこの家々の内からこの大気中にそれぞれのかたちのすがたなく饒舌〔おしゃべり〕な感想をもってたちのぼりだすのだ。

 

まるであめがふりあがるよぅに

 

この五感の湊〔なみ-〕打つ僅些〔ささぃ〕な変化こそが、この街といぅ器の姿なぃ人々のすがたそのものの輪廓をかたちづくりながら、

それでもつつがなくとどめなくこのおぉきな天地の理を風土〔あめつち〕に包むままにおくこの世界は、それをその場所〔ありか〕で昇〔たか〕くまるで見おろしながら、

 

この見上げるその果てからやがて紺青にそまりだす空に、

ぽつりひとつひとつと星が姿を見せ始めるだろぅ。

 

―またふりさけあるよぅに

 

それはやがて

大人にはノスタルジアに、

―かわらぬ旧知の面差〔かお〕をして

子どもには只〔ただ-〕現在〔いま〕の光〔かがやき〕となって

まるで母星への帰還の念〔おもぃ〕の情を想ゎせるよぅな浪漫〔ロマン-〕チシズムへいざなぅのだ。

 

―かどけくこのみにかどゎかすよぅに

 

つまりこの大根といぅ一人の年端なぃいまだあどけくもりっぱな少年は、

そのこのはるかな街道を往く無頼の流浪人〔たび-びと〕にして雄大なる冒険者は、

夕のかなたへ暮れる空へ、家〔うち〕がこいしくなってきたのである。

 

 

こんこんこん、と

上等に鞣〔な〕められた、敷ぃたばかりの道の街路の上で、その摺り切れくもまだやゎらかい靴底の…ただ一とつぶての平坦な情報量の音が響く。

並ぶ戸建てのまるで護衛隊の列を思ゎす風景の中に

一嵐―と元来は弱気な少年には十分におもゎせるひとかげの過去るなか、

まるで成果もなく凱旋する騎士団長のよぅな、夕影の重みが目線をまた己の足許へと誘ぃだす。

 

こんこんこん、と

 

見詰めるほどに早回しな惑星〔ほし〕のくれりゆく空の光のなかで、それほどに寡黙へとなるなめらかにつやゃかな青黒ぃ視界の上で、燕の背中のよぅにちぃさくも深まる空の色に照らされた己自身のこの空〔-くぅ〕にとけそぅな秋服を纏〔ま〕とぅ蔭を運ぶ。

その袖裾襟ぐりの過保護にもまだ大ぉきめなゆらめきがわさりゎさりとゾォマトロォプの な か ま になって風をならすのに、きがつけば駆足〔はや-あし〕になってぃた。

 

眼鏡の端をなごりがましくより際だてるよぅなぞりながら、いまはもぅ左肩のわずかを掴かむ陽の光の温くもりをすら丸ごとその奥のはらのうちへ背請ぅ原初の森が、そんなことさらのよるべに点明する灯〔ともしび〕すら濃碧〔ふかみどり〕のしゃく然〔-ぜん〕のなかへ呑み込むよぅな淵の色になってぃる。