*ぷみささんちの白紙帖

ぼくのこころのふりーだむ。

*ぴちゅ:めゝんと∴ぱらたいぽ

「ぶぼをゎわぁっほぇ!!!」
どこか星間大気の風にでものるよぅに、たゆたゅととろけてぃた意識が
なんだかこぅ、ぬくまゅい胸のなかのほぅから眼鏡の弦の挟んだ頭の後の神経の塊へと産毛立たせてガクッともどる。

感覚的に衝撃的未来予測のなか急接近した運河の水底の感覚は吹き出す冷汗と現実で同化し、子どもの身軽さだからこそそなゎった機敏な本能反射で地面を踏んぎった足にひっぱられるまま反重力から帰還するよぅにとっさに振り向くと、

ぼくのお尻のやゎいわれ目にその徹(とぉ)った鼻筋をジャストフィットさせてぃたイキモノが、

背後には荒ぃ息遣ぃと、濡れた黒ぃ鼻、丸々とこうこぅきらめく綺麗ぃな目が見詰めてぃた。

「がごめ…。」
それは見馴れた姿、なんとも名状し難たぃふくゃかな体格を持った、雑種の亜仁色に白ぃ犬(ワン)ちゃんだ。


黄昏の明かりにぴかぴかとひかる何色といっていぃかわからなぃ毛並み、
その上に生菓子のよぅに映ぇる出しっぱなしの桜色の舌、
中途半端に傾ぃた三角の耳、きれぃに丸まった尻っ尾はそのあまりなふゎ毛で団子になり、わりとなんだかスッとした抜き差しならなぃとおもぃきやいまぃち間の抜けた目口許の微笑むよぅな面構ぇ、
凛と伸びた長短差し量れぬ脚、そのすべてが身近なものにとってはどれもみな唯一に無上にかわいぃらしぃ、
だきごこちのいぃ中くらぃの身丈は、ぼく等にとってはまだすこしおぉきぃ。


「がごめちゃん!
がごめちゃん!」
その優しぃ目許に似た顔をした、
馴染みぶかぃ声の妙齢のおばさんが、硬ぃ音でアスファルトをほうほぅに鳴らし眼射しを寄せながら
少し厚底のつっかけで急ぃで駆けてきた。

本来その手に捕まれている筈の輪っかになったその先は、よくみればぷらりと舗装道路に転がっている。
それを双(ふた)たびまた拾ぃあげ握られ、

年代物の赤ぃリードを首に引き摺られるそれすらも、その顔すらやたら楽しそぅだ。

「まったくがごめちゃん―ほらがごめ、がこめちゃん!こらっがごめ!
ぁ〰️がごめ!んもぅっ、もっ
うちのがごめったら…いつもごめんねぇ大根(ひろちか)ちゃん。」

「お世話になってます、ありがとぅございます。
いゃ、だぃじょうぶです…
こんにちは、荻乃のおばさん。」
ぺこりとお辞儀で挨拶する。

そんなぼくの今なを脚許を自身の赤い紐の自動繰り出しリードで巻きながら、周りをがごめちゃんはぐるぐる回っていた。


ちなお名前の由来はご主人さんが大好きな食べ物らしぃ。
このふわふゎの毛並色にぴったりだし、可愛いぃよね。


なんかわりとだいぶ危なぃ目にあった気が、するが
いつもの和じみぶかぃ顔の安心感補整でにゎかに心に落ち着きが戻どる。


ぼくがいまよりもっとまだ小さな小学生だった頃、
かょいたての通学路の脇の、直ぐ住宅街の隣に接した道の、一つのお家のその柵の向こぅにいるぼくはみたこともなぃそのいきもの―びびりなこどものたぶんにもれず犬が怖かった。
毎度々ぼくがいつもな情さけなぃ有り様なので、
わが兄弟あの蓮根が、その犬へ率先して、ちょっかぃを掛ける様ぅになったのである。
話し掛けたり、手で触ってみたり、拾った棒を追ゎせてみたり、
ぼくがぴーぴぃ騒ぃでそんな弟のいたずらをほっとく訳にもいかず、そぅいう形で二人でしょっちゅぅかまってぃたところ、
そんなこんなで仲良くふれぁって"遊んでくれる"僕達へと、元々無邪気ながごめちゃん…その犬ちゃんからはすっかり懐かれてしまった。
しかもがごめちゃんは、親愛の表れのふれぁぃらしぃんだけれど、ぼくだけに向かって
何故かおしりに突撃してくる。


『がごめちゃんにとってその場所が調度ゥ塩梅がいぃ。』
のだそぅだが。野性生物ってわりとそぅいうとこらへんへのフリーパスさがあるんだろぅか。彼等とまるで心がつぅじたよぅなわけゎかんなぃ論説を
そぅ語るのは荻乃のおばさん―、その家のがごめちゃんの親、つまり飼ぃ主の荻乃(おぎの)さんだ。
僕達兄弟の家族―つまり母達と一緒に、ぼく達子どものことを気に掛けてくれる大勢のご近所さんの一人である。

「大根ちゃん、結っ構あたしねぇ
声をかけて呼んだのだけれど、
全然ちっとも、気付かなぃもんだから。
それでがごめがね、また飛び出してっちゃって。また。
がごめちゃん、大根ちゃんが、こんなにお気入りなもんだからねぇ、無事でよかったわぁ」

どぅゃらぼくは、いつのまにか子供特有のあまりにとても強ぃ没入的な集中力で
ほんとぅに意識が"現実"の景色から
すっかりはなれてとんでしまって在たらしぃ。

「ははは…
なんかやたらぼくだけに来ますよね、いちばんかまってたのは蓮根の方ぅなのに。」

そぅこう話してぃる内にも一心にお尻の匂ぃを嗅ぎながら、その伸びた鼻筋を突っこもぅとしてくるがごめちゃんに、それを避けるため姿勢を正そぅとするのだが、
脚に巻かれたリードのせぃで意外ィとうごけなぃ、ので懸命にお尻りの筋肉に力を入れる。
そんな知能犯だかシンプルにアホゎんこなんだかはっきりしてなぃのががごめちゃんのチャームポィントでぁる。

「ふふふ、
また今日も、蓮根ちゃんと一緒なの?」
「ん―ん、今はぼくひとりです。」
「ぁら…そぅ、だったのねぇ。
珍しぃわねぇ、大根ちゃんが一人で遊んでるなんて。」

「ぅうん。一っ緒です、 蓮根は今、あっちの方をまゎってるんです。それで、ぼくはこっち。二人で役目を分担してて…」

「ぁあ…―そぅなの、そぅなのねぇ、やっぱり二人で遊んでるのね。今まは
一体なにしてるの?」

おばさんにはほんのコミュニケーションの中で交ゎす些細ぃな話題の種に過ぎなぃのだけれど。

「ぇ…っと―。」


こんなこと、なんと言ぇばいぃのだろぅか。


『存在しなぃ蝶を探してる』だなんて。


あまりいったもんではなぃのだが、
この街に暮らす人々の過去にとって、
かつて、あれだけのことをやってしまったわが家族に、
こぅして温かぃ思ぃ遣りと優しぃ眼は向けど、雪さんの事もあり―なにひとつと心に気が気ではなぃ感情を抱かなぃではなぃ筈だ。

特に母親のあぁなった一度のその原因は子育てに対する窮地からくる育児ノイローゼでぁる。母のその母親としての能力を疑ぅ声があってもおかしくはなぃ。現にもっと幼ぃぼくらがまだ分別おぼろなころは、もしものときは此っ方がおやのつごぅをひきうけてもいぃと、あくまで母自身とお互ぃの境遇を思ぃ遣ってろぅが、そんな声もぁったのだ。

その母親への人間的信頼を回復し、そして人々へ挽回するには、まぎれもなきその僕達子供が
健やかに真面目でいぃ子に育ってることを見せることが、母親とそれを見守る人々に対ぃする一番の結果でぁる。

それにただでさぇうちの双子の弟のあの蓮根はぁんな感んじだ。
今でこそこんなに手が焼けるのに、成長したらどこまでこの先やんちゃになるのか。

その上その弟を見守るしっかりした兄であろぅ僕が、どぅだろぅ、『いなぃ蝶がいなぃんで探がしているんです』とか言ぃ出したら。


これ以上この街の人々にわが一家が、よけぃにいらぬ気を揉ませるよぅな心配を掛けるわけにはいかなぃ。

「ぼく達は今
ぇえ―ッとその……
…蝶を、探してるんです。」

「ぁら!
そぅなの、蝶ょぅちょをさがしているのね!うふふ!」

附せ込める顔を覗き込む仕種も露ゎに表情の心配そぅな荻乃のおばさんは、その子どもらしさもあらゎな健康的な答ぇにぱっと明るくなった。

「蝶ょぅちょさがしだなんて、かゎぃらしいわぁ~、大根ちゃんに蓮根ちゃん。
ちっちゃぃのならそのへんの花の咲ぃてる公園だとか畑に行けば、そこら辺にだっているゎよ。」

「ん~…、ちょっ〰️と、珍しぃやつ。」
「へ~、そのぁたりにもいるの?
ここらなんかにいるものなのかしらねぇ?どんな蝶?」

「アゲハチョウ…っぽぃ、ぉ大っきなはねのやつ、たぶん。」

「嗚呼アゲハチョウね~…おばさんの子どもの頃は、この辺にもよくいたわよ。そぅそう、川の側なんてねぇ」
「そぅなんです。だからぼく、こぅやって川の側を見てみよぅって、蓮根と」



『大丈夫だ
お前達なら絶っ対に、見付けられる。』